2018年06月05日

『海賊島の殺人』

七月に東京創元社より『海賊島の殺人』(創元推理文庫)が出ます。

2015年に発売された『北半球の南十字星』の文庫版で、タイトルを『海賊島の殺人』に変更しました。
作者自身も気に入っている話なので、手にとって頂ければ嬉しいです。

ともあれ、文庫化できて良かった!
この吉報を、ぜひ作中の海賊たちにも知らせてやろうと思ったのですが、なにせ海賊だから、いったん海に出てしまうと連絡の取りようがないんです。
あいつら、いったいどこにいるんだろう。
七つの海のあちこちから目撃情報が寄せられるものの、急いで現地に向かっても、到着するとすでに彼らの姿はなく……。
神出鬼没の連中なので、こういうときは本当に困ります。
仕方がないので伝言を残して引き上げたのですが、帰宅すると、彼らの一人から手紙が届いていました。ジーナ・ウェンライトという女海賊です。
以下に手紙の要約と雑感などを。

「久しぶり。伝言をどうも。私はいまオーストラリアの北端をインド洋へ向かってるところ。あの本が文庫になるんだって? おめでとう。ところで文庫って何? まあいいや。今月末にインドへ立ち寄る予定だけど、その本はインドで売ってる? あ、ないの? じゃあ、いつか日本へ行ったときに奪い――じゃなかった、買うことにする。こっちは元気でやってるから大丈夫。他の船長たちも、たぶん、まだ生きてる。とりあえずお祝いの品を送っておいたから。じゃあ、また」

 手紙の文面は優しげだが、怒らせると彼女は実に恐ろしい人である。そうでなきゃ海賊船の船長にはなれないだろう。少し意外だったのは手紙の文字が端正なことで、中世の識字率の低さから考えれば不思議な気がする。彼女は海賊になる前の経歴を黙して語らないが、何かありそうだ。
 さて、問題は手紙と一緒に送られてきた小さな酒壺だった。彼女がつくった〈南十字星〉というお酒なのだが、実はまだひとくちも飲んでいない。せっかくのお祝いの酒をなぜ飲まないのかは、どうぞ来月発売の『海賊島の殺人』を読んで確かめてみて下さい。

posted by 沢村浩輔 at 13:03| お知らせ