2022年05月31日

更地の謎


たまに通る道で、建物が取り壊されて更地になっている場所を見かけたとき、そこに何があったのかどうしても思い出せないのは何故だろう。
しかも、思い出せそうで思い出せないのではなく、まったく思い出せる気がしないのが、実に不思議である。
本当にその場所に関する記憶の一切が消えてしまったかのようだ。
この現象は、ちょっとインターネット的だと思う。
ときどき見にいっていたブログが、いつのまにか削除されてしまって、もう見ることができなくなっていたときの、あの感じに近いのである。
例えば、かつてその場所に銭湯があったとしよう。
何度もその前を通るうちに、銭湯の外観が私の脳に記憶として刻まれる。
しかし実は、その銭湯の実在と私の記憶はリンクしており、銭湯が消滅すれば、私の脳内に保存されていた銭湯の記憶も自動的に消えてしまうのではあるまいか。
そう考える以外に、よく見知っていたはずの建物の記憶が、かくも鮮やかに私の中から失われてしまう理由に説明がつかないのだ。

posted by 沢村浩輔 at 03:08| 備忘録とかメモ