この春に本棚の入れ替えを行った際、各本棚の本を、ところてん式(?)に移動した。コミックスの置き場所のひとつが、机に座って首をひょいと右に向けた先になったので、必然の結果として、ときどき読み返している。
昨日は町田洋さんの短編集『惑星9の休日』を再読した。
全編面白かったが、今回心に残ったのは、「UTOPIA」だった。
膨大な映画のフィルムを保管している倉庫でアクシデントが起こる話で、倉庫の管理人のおじいちゃんと青年の会話が素敵だ。
保管してあるフィルムのほとんどを観たと言うおじいちゃんに、青年が「ええ!? 全部!? これ全部!?」と驚く。
そして矢継ぎ早に訊ねる。
「……これ面白い?」
「面白いよ クライマックスの女優の鬼気迫る演技がすごい」
「これは?」
「面白いよ 音楽の使い方のズレ具合がまた洒落てるんだな」
「あ、これは観たわ すげえつまんなかった」
「いや、面白いよ 夏の岬の風景が爽やかで癒されるね」
『惑星9の休日』P28より
いいなあ、と思う。
私もこのおじいちゃんのような境地に立ちたい。
でも油断すると、ついあら探しの感想を言いそうになる。
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