2024年10月01日

近所の空き地


住宅地の中にある古い建物が取り壊されて、新しく何かが建つまでの期間限定の、夏草がびっしりと茂っている空き地の上空を、夕方近くなると小さなコウモリがひらひらと舞っている。
おそらく草地で発生した羽虫を食べるために集っているのだろう。そして毎度、結構な数のコウモリたち(ざっと十匹くらいだろうか)が飛び交っている。
横溝正史ファンとしては、蝙蝠とくれば(やはりコウモリではなく蝙蝠という漢字表記がしっくりくる)、洞窟が住み処であってほしいところだが、この辺りに洞窟などないことは明らかなので、はて、普段はどこにいるのだろうと調べてみると、市街地在住の蝙蝠は、人間が住む家屋の天井裏や軒下などに、しれっと共生しているらしい。
彼らは害虫等を食べてくれる益獣(ほ乳類なので、たぶん獣でいいはず)であると同時に、糞が人間の生活環境を汚す害獣でもあると知る。
それはともかく。
空き地の傍で足を止めて眺めていても、普段ならたちまち寄ってくる蚊が一匹も刺しに来ない。蝙蝠が蚊の捕食者だと実感できる瞬間だ。
そして、ふと思う。
この蝙蝠たちの中に、ヴァンパイアの化身が一匹混じっていたら面白いのに、と。
いや、仮にこの町にヴァンパイアがいたとしても、まだ空が明るいから飛び回るのは無理だろう。
いやいや、実は蝙蝠の姿でいるときは日を浴びても大丈夫なのだが、天敵である人間には、その事実をあえて隠しているのかもしれない。

ようやく少し涼しくなってきて、ほっとしております。

posted by 沢村浩輔 at 02:01| 備忘録とかメモ

2024年09月18日

25年目の積ん読本


ついに『時の娘』を読みました。
購入したのは、たしか二十世紀の終わり頃です。
25年間も積ん読状態だったわけで、我ながら何やってんだと思います。
で、読んでどうだったか?
素敵な小説でした。
私が英国の歴史に疎いので、この作品が持つ驚きや意外性を十分に味わえなかったのは残念ですが、素直にストーリーに身を委ねつつ、小説全体に漂う品の良さと、文字通りの安楽椅子探偵グラント警部の推理を楽しみました。

ところで、買った本はすぐに読む場合もあれば、しばらく寝かせた後で読む場合もあれば、長いあいだ放置してしまう場合もあります。
当時の私は、『時の娘』をすぐに読むつもりで購入したはずなのに、なぜ名作の誉れ高いこの作品を四半世紀も放っておいたのか。
今回読み始めてほどなく、その謎(?)が解けました。
小説の冒頭に、薔薇戦争についての説明があり、続いて十五世紀の英国王室の系図が二種類載っています。おそらく25年前の私はこの系図に心が折れたのです。
英国史あるある、ですな。

以下は、この作品ではなく、英国史に対するささやかな愚痴である。

『時の娘』の二枚目の系図には24人の名前が記されているが、驚くことに24人中6人(!)がリチャードである。そしてエドワードが4人、エリザベスが3人いる。24人のうち13人(!)がわずか3つの名前で占められているのだ。
オーケー、ひとつ質問させてくれ。どうやって覚えろと?
それだけではない。系図の中にリチャード・ネヴィルという人がいるのだが、彼の息子もリチャード・ネヴィルなのである。
名前というのは個人を識別するための記号だ。当然、他者と異なることが求められる。なのに一字一句違わぬ名前の親子がおり、しかも親類縁者にリチャードがずらりと並んでいる。
たしかにリチャードという名前は、品があって音の響きも素敵だ。Richardの綴りも申し分ない。素晴らしい名前だと認めよう。だが、しかし。
私は当時のランカスター家とヨーク家の方々に問いたい。
いったい、どういうつもりなのか。
なぜこれほどまでにリチャード尽くしなのか。
ぜひ納得のいく説明をいただきたい、と。
ちなみに一枚目の系図も同様で、全19人中、リチャードが4人、ヘンリーが4人、ジョンが3人いる。そしてこちらにも、ジョン・ボーフォールという同名の親子が存在する。
まさに王家のみに許されるクレイジーさというか、庶民には逆立ちしても不可能な技だ。名前なんて自分が付けたいようにつければいい。他人がどう思おうが知ったことか、と言わんばかりでいっそ清々しい。

posted by 沢村浩輔 at 00:48| 備忘録とかメモ

2024年09月02日

創立70周年おめでとうございます







東京創元社が今年で創立70周年を迎えたそうです。
記念品を頂きました。

画像は、頂いた手帳と、最近読了した『悪魔のひじの家』(創元推理文庫)。

未読だったカーの長編を新訳で読めるのだから感謝です。

これからも新旧取り混ぜた面白い小説を、全国の本好きに届けていただきたく、期待しています。

posted by 沢村浩輔 at 00:42| その他