住宅地の中にある古い建物が取り壊されて、新しく何かが建つまでの期間限定の、夏草がびっしりと茂っている空き地の上空を、夕方近くなると小さなコウモリがひらひらと舞っている。
おそらく草地で発生した羽虫を食べるために集っているのだろう。そして毎度、結構な数のコウモリたち(ざっと十匹くらいだろうか)が飛び交っている。
横溝正史ファンとしては、蝙蝠とくれば(やはりコウモリではなく蝙蝠という漢字表記がしっくりくる)、洞窟が住み処であってほしいところだが、この辺りに洞窟などないことは明らかなので、はて、普段はどこにいるのだろうと調べてみると、市街地在住の蝙蝠は、人間が住む家屋の天井裏や軒下などに、しれっと共生しているらしい。
彼らは害虫等を食べてくれる益獣(ほ乳類なので、たぶん獣でいいはず)であると同時に、糞が人間の生活環境を汚す害獣でもあると知る。
それはともかく。
空き地の傍で足を止めて眺めていても、普段ならたちまち寄ってくる蚊が一匹も刺しに来ない。蝙蝠が蚊の捕食者だと実感できる瞬間だ。
そして、ふと思う。
この蝙蝠たちの中に、ヴァンパイアの化身が一匹混じっていたら面白いのに、と。
いや、仮にこの町にヴァンパイアがいたとしても、まだ空が明るいから飛び回るのは無理だろう。
いやいや、実は蝙蝠の姿でいるときは日を浴びても大丈夫なのだが、天敵である人間には、その事実をあえて隠しているのかもしれない。
ようやく少し涼しくなってきて、ほっとしております。
【備忘録とかメモの最新記事】